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相続について知りたいなぁ、なんか法律変わったみたいだし・・・と、ひとくちに言っても、

・相続税がいくらになるのか、申告が必要となるのか

・どうすれば納税額を減らすことができるのか

・納税資金はどのように準備すればよいのか          

・そもそも誰がどのように相続するのか

などなど、相続・相続税に関する疑問は多様にあるかと思います。そこで今回は、『相続税の申告が必要となるのか』をテーマにお伝えしたいと思います。なぜ?そんなことより対策!節税!!と思われる方もいるかと思います。しかし、相続税を考えるうえで重要なのは、『そもそも相続税を払わなければならないのか』ではないでしょうか。いくら頑張って様々な税金対策をしても、課税価格が基礎控除額を超えなければ相続税は課税されないのです。課税されないとわかれば、相続が争族にならないように対策するに尽きます・・・。

なお、国税庁の発表によると、平成25年中の課税割合は4.3%でした。それが今回の基礎控除の見直しで6%台程度へ上昇すると考えられています。(平成22年12月7日税制調査会議事録より)また、ある調査によると都内のなんと4人に1人(25%)が課税対象になるとも言われています。

では、簡単に相続税の課税価格計算方法をご説明します。

    本来の相続財産価額

現金、預貯金、有価証券、土地、家屋、貴金属など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものです。

    みなし相続財産価額

生命保険金・死亡退職金等です。なお、保険の契約者・受取人・保険料負担者など契約内容の違いにより、相続財産とみなされない場合があります。

    非課税財産価額

  墓地、墓石、仏壇など。②で取得した生命保険金・死亡退職金等のうち一定金額のことです。

    債務・葬儀費用

借入金、未払い医療費、未払いの所得税・住民税、お通夜費用、戒名料等。なお、すべての債務・葬儀費用が控除できるのではないので注意が必要です。

    生前贈与の加算額

相続開始前3年以内に贈与された贈与時の価額が加算されます。これは、贈与税の基礎控除額(毎年110万円)以下であっても加算の対象となります。また、贈与税の配偶者控除額に相当する部分には適用されません。

税制調査会議事録http://www.cao.go.jp/zei-cho/history/2009-2012/news/2010/index.html

国税庁http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/h26.htm


担当 竹内 美佳 平成27年10月24日

前回のテーマで 基礎控除額が下がったのはわかったし、うちはそれでも大丈夫っ!申告の必要ないみたいだし、もう安心~☆ と思っている皆様。決して不安をあおるわけではありませんが、ここで一つのデータをご紹介します。

裁判所の司法統計によりますと、平成26年に成立した遺産分割調停で最も多い遺産額の価額帯は、5000万円以下とのことでした。平成26年ですから、基礎控除額が見直される以前「5000万円+(1000万円×法定相続人の数)」の時のことです。1000万円以下も合わせると、全体の約75%です。一概には、相続税の申告が必要ないから安心~☆とは自信を持って言えなくなってしまいますね。そこで今回は、 遺言による遺産分割 特に、円満な遺産分割に効果的と言われている遺言の重要性をテーマにお伝えしたいと思います。

 一般的に相続対策というと、遺産分割対策・納税資金対策・節税対策が挙げられます。後者二つが相続税の申告・納税を前提とした対策であるのに対し、今回テーマとする遺言による遺産分割対策は、誰にどのように相続・遺贈させたいのかなどを事前に考えておくものなので、相続税の申告が必要なくとも相続が発生する限り、対策しておくことをお勧めしたいと思います。 う~ん・・・でも、うちはみんな仲良しだし、大丈夫!!きっと遺産分割もすんなり終わるはず☆ と思っている皆様。決して、決して不安をあおるわけではありませんが、また一つのデータをご紹介します。

右のグラフは、遺産分割協議が相続人同士でうまくいかず、家庭裁判所へ新たに申し立てられた件数の推移を表したものです。ここ20年間で1.5と著しく増加傾向にあることがわかります。遺産額がいくらでも、家族関係が良好でも、遺産分割がスムーズにいかない可能性は残念ながらあるのですね・・・。

 しかし、そもそもなぜ協議がうまくいかないのでしょうか。遺言がなくても、法定相続分は民法に規定されているはずです(民法900)。必ずしも法定相続分で分割する必要はありませんが、話合いがこじれて調停を申立て、何度も(調停成立までにかっかた期間と回数で最も多い割合は1年以内、6~10回)裁判所へ出向くよりは、民法通りに分割したほうがよさそうな気が私はしてしまいます。ですが、実際はそううまく分割できない事例が多いようです。例えば、

といったように、自分のためによく頑張ってくれた子()に対して、少しでも多くの財産を残してあげたいと思うのが当然の気持ちではないでしょうか。そこで有効な手段が 遺言状の作成 です。法定相続分とは異なる相続をさせたいとお考えの場合は、これまでの事情を考慮して遺言状に記すことができます。実際のところは、特別受益や寄与分は付言事項といって、必ずしも遺言状の通りになるとは限りません。相続人同士の協議が整わず、裁判となれば、裁判所は遺言状にとらわれず事実関係や証拠を基に判断します。十分な証拠がなく、寄与分が認められないケースも少なくないそうです。しかしだからこそ、遺言状にその旨を具体的に残しておくことが重要だと私は思います。なぜそのような内容にしたのかを相続人に理解してもらいやすくなるからです。ご自分の強い感謝の思いや意思を最期の最期に伝えることができるのが、遺言状なのです。

また、ご自分が亡くなった後に残されるご家族のことが心配な方も、多くいらっしゃると思います。

などをお考えの場合にも、遺言状の作成をお勧めします。理由は⇒右に書いてあるような問題があるからです。

また、人はいつどうなるかわかりません。高齢でなくても事故や心疾患・脳疾患などで突然亡くなってしまう可能性は残念ながら否定できません。心身ともに元気な時にこそ、 遺言状の作成 をお勧めします。

しかし、今の状況や気持ちで遺言状を書いても、今後の家族関係や気持ちの変化があるかもしれないから、なかなか遺言状を書く気になれない方もいらっしゃるようです。安心してください。遺言状は一度書いても何度でも書く(書き直す)ことができます。むしろ、遺言状はその時々の状況や気持ちに合ったものであることが重要なので、積極的に見直すほうがベストなのです。


担当 竹内 美佳 平成27年11月7日

  次回のテーマである『 遺留分 』についてご説明する前に、既にご存じの方も多いかと思いますが、今回はその大前提となる『 法定相続分 』をテーマに詳しくご説明していきたいと思います。では、下の図をご覧ください。

 左の図は、法定相続人の相続分を分かりやすく図にしたものです。このような図をどこかで見たことがある方もいらっしゃるかと思います。この図のそれぞれの配分さえ覚えてしまえば、法定相続分については完璧です!それぞれの数も 配偶者と子は1/2ずつを基準に考えると 配偶者は分母も分子も1つずつ増えて、直系尊属・兄弟姉妹は分母だけ1つ増える となります。いかがでしょうか?とっても簡単ですよね☆この図の数だけを覚えるのでしたら問題ないと思いますので、早速事例をみていきましょう。      

  実は、最初の図にはわざと見えづらくしておいた部分があります。最初の図との違いをおわかりいただけるでしょうか。法定相続分の数字ばかりに気を取られてしまい、相続の順位を見逃してしまいました(体験談・・・)。最初の図の時のように、それぞれの配分さえ覚えてしまえば完璧☆と勘違いしてしまうと、このような間違いの原因となってしまいます。

被相続人に子がいない場合にはじめて第二順位の直系尊属が相続人となり、子および直系尊属がいない場合にはじめて第三順位の兄弟姉妹が法定相続人になります。

では、こちらの図に当てはめてもう一度③の事例をみてみましょう。

     

 担当 竹内 美佳 平成27年12月5日     

  民法の法定相続分よりも優先される遺言のはずなのに、なぜ遺留分という制度があるのでしょうか?それは、相続人の生活保障・相続人同士の公平性を保つ・被相続人の財産形成には相続人の潜在的な協力が関わっていからなどとされています。ただ、前半でも述べましたが、遺留分を侵害する遺言は当然に無効となるわけではありません極端に言ってしまえば、遺言状をご自分の思うがまま自由に書き、あとは相続人がその思いを尊重してくれるのを期待することも可能です。また逆に、遺留分を侵害されている方にとっては、そもそも自分にも財産をもらう権利があることを知っておくことが大切です。その上で、消滅時効があることに関して十分ご注意し、減殺請求をするとお決めになったらできるだけ速やかに減殺の意思表示をすることをお奨めします。


担当 竹内 美佳 平成28年2月6日

 これまで『 遺言による遺産分割 』では、遺言を残すことの重要性や特別受益・寄与分、法定相続、遺留分などについてお伝えしてきました。これらは、いざ遺言書を書こうとする際に是非知っておいていただきたい法律上の知識です。

 そこで今回は「そもそも遺言書って具体的になんだろう?」についてお伝えしていきたいと思います。


 遺言能力の有無に関しては、もちろん自筆証書遺言においても同じことが言えます。ですが、公正証書遺言の絶対的なイメージが強すぎるあまりに、何らの疑問を持つことなく遺産分割をしてしまうことには注意していただきたいと思います。逆に遺言書を書く方から考えますと、遺産争いをしないように遺言書を作成したも、認知症を口実に争いがおこってしまう可能性があります。この点につきましては、次回以降にて詳しくご説明しますが、たとえ認知症と診断されても、遺言能力がないわけではありませんので遺言を残すことが可能です。できるだけ早く専門家へご相談することをお勧めします。

担当 竹内 美佳 平成28年3月2日

 今回のテーマは、遺言能力についてです。遺言能力については前回も少しふれましたが、今回はより深くほりさげてご説明していきたいと思います。と言いますのも、いくら相続対策は生前の元気なうちに考えておくのが良いと言われても、やはり、健康な時に自らの死後を考えることは難しい、または抵抗を感じてしまう方が多いのが現実ではないでしょうか。そこで、いよいよ自身のあるいは家族の健康に不安が出てきた時にした遺言は、どのような取り扱いをされるのか。今回は特にその遺言能力の有無が争われるであろう『認知症』を発症している状態の方がした遺言について見ていきたいと思います。


担当 竹内 美佳 平成28年4月9日    

 今回のテーマは、前回に引き続き遺言能力についてです。前回は遺言能力を無効とした裁判例をご紹介しましたが、今回は有効とした裁判例を見ていきたいと思います。遺言能力とは何かについては前回もふれましたが、大事なことなので今回も初めにご説明します。

Question 遺言能力

・15歳に達した者は遺言をすることができる 【民法961条】

・遺言者は遺言をする時においてその能力を有しなければならない 【民法963条】

その能力=遺言能力 となるのですが、その定義とは・・・

 近年の裁判による定義

 定義に関しては、判例や学説によって異なるものもありますが、近年では下記裁判において次のように言われています。

 遺言者が遺言事項(遺言の内容)を具体的に決定し、その法律効果を弁識するのに必要な判断能力(意思能力)

                                        東京地 平成16年7月7日判タ1185号291頁

それでは事例を見ていきましょう。

 今回の最大のポイントは、異常な言動の原因にありました。以下、裁判所が認めた事情です。

①Aの見当識障害は、脳梗塞急性期と夜間せん妄の2つの異なる病態を基に出現。

②脳梗塞急性期における見当識障害は平成3年1月中には消失。

③夜間せん妄に関しては、夜間または早朝に限って出現。

Aの見当識障害の原因が脳血管性認知症にあるとすれば、異常な言動の出現が夜間・早朝に限っていることを、合理的に説明することは困難

 →Aの見当識障害の原因は、脳血管性認知症ではなく高齢者に多い夜間せん妄によるもの。

以上に加え、Aの院中の生活状況、病状、遺言作成の契機となった事情、遺言作成時の状況を考慮し、Aには本件遺言時、遺言能力があったとされ、遺言は有効であるとされました。

 前回との違いの一つは、認知症の種類です。前回がアルツハイマー型認知症であったのに対し、今回は脳血管性認知症が疑われるケースでした。・・・その違いそんなに大事なこと??と思いませんか?ところが、両者は症状や病状の経過が異なるため、遺言能力の有無の判断に影響を及ぼすとされており、実際に裁判で争われています(名古屋高判平14・12・11 平13(ネ)376)。両者の詳細な違いをここでご説明することは避けますが、アルツハイマー型認知症は記憶力や他の能力の低下が全体的なのに対し、脳血管性認知症は部分的で人格・判断力が保たれることも多いそうです*1。判断力が保たれるとなれば、遺言能力があったとされる可能性は高まるでしょう。今回の事例において裁判所は、被相続人の異常な言動を、高齢者に多い夜間せん妄によるものだと結論付けましたが、認知症にこのような違いがあるのならば、遺言能力の有無を判断する際に、被相続人がどの認知症を発症していたかが重要であることも納得できますね。

  相続争いとなると、家族関係・法律の問題だけでなく、認知症の種類という医学領域にまで広がってしまうこともあるとは・・・。本当に奥が深いと言いますか、複雑な問題です。やはり大切なことはこれまでもお伝えしてきましたとおり、まずは元気なうちから【早め早めの対策】、次は、

・遺言作成時の日付が確認できる録画や録音を残す。

・医師を立ち会わせる。

・作成前後の被相続人の症状を詳細に記録しておく。

以上のことが争いを大きくしないための対策と言えるでしょう。

*1http://www.icarastudy.com/symptom/post-50.html


担当 竹内 美佳  平成28年5月7日

 前回までは、遺言による遺産分割についてお伝えしてきましたが、今回は遺言がない場合を想定した相続人による遺産分割協議、特に現金預金や株式、個人向け国債、投資信託受益権についてご説明していきたいと思います。

①現金について

 認められる。預貯金のような金銭債権は、分けることが可能な可分債権として、民法427条を適用し、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、相続人の間で遺産分割の対象とする旨を合意した場合を除いて遺産分割の対象にすらならず、それぞれの相続人は、自分に帰属する債権部分について単独で支払いを請求することができます。(最判昭和29.4.8民集8巻4号819頁、最判平成21.1.22民集63巻1号228頁、東京地判平成9.10.27判タ999号283頁、東京高判平成7.12.21判タ922号271頁)

民法427条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

実際の銀行実務では判例の立場とは違い、法定相続人全員が実印をついた遺産分割協議書など所定の書類がなければ、一部の相続人による払戻請求には応じないことが一般的です。

*ただし、2016年3月23日において預金を他の財産と合わせて遺産分割の対象にできるかどうかが争われた審判の許可抗告審で、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は23日、審理を大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)に回付しました。つまり、実務で当事者の合意があれば分割の対象とするケースが主流となっていることをふまえ、上記のように対象外としてきた判例が見直される可能性があります。

②甲会社株式について

 認められない。株主は、剰余金の配当や残余財産の分配を受ける自益権と株主総会における議決権などの共益権を有しています(会社法105条1項1号2号3号)。このことから単なる金銭債権とは異なり、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、相続人全員の準共有となり(民法898条、264条)、遺産分割協議にて分割されることになります。(最判平成2.12.4民集44巻9号1165頁、最判平成9.1.28判時1599号139頁)

学説では、共益権があることは可分性を否定する理由にならず、今回の例ですと、25株ずつを単独相続し、残り1株を準共有とする説もあります。

③個人向け国債について

 認められない。個人向け国債は法令上、一定額(1万円)をもって権利の単位が定められ、1単位未満の権利行使は予定されていないことから、上記②と同じく、準共有となります。 (最判平成26.2.25民集68巻2号173頁)

準共有 所有権以外の財産を共有すること

解釈として②の学説と同じく、25万円分は各相続人に当然帰属し1万円のみ準共有となる考えもできますが、判例はこのような処理方法を認めていません。

④投資信託受益権について

 認められない。今回の例における投資信託は、委託者指図型のものでした。この受益権は金銭支払請求権のほか、信託財産に関する帳簿書類の閲覧又は謄写の請求権(投信法15条2項)等の委託者に対する監督的機能を有する権利もあり、可分給付のみを目的とする権利ではないことから、上記②③と同じく準共有となります。(最判平成26.2.25民集68巻2号173頁)

まとめ

 以上4のことから、相続財産である金銭債権には当然に法定相続分で分割されるものと、されないものがあることはお分かりいただけたでしょうか。

  補足として①の預金債権に関してですが、上で述べましたとおり金融機関は実務上、相続人全員が実印をついた遺産分割協議書などがなければ支払い請求に応じてくれません。しかし、金融機関を相手とする支払い請求訴訟は単独で行えます

 また ④の投資信託受益権については、遺産分割協議前の準共有の場合に解約や償還金請求が、共同相続人全員の同意を必要とする処分行為(民法251条)なのか、持分価格に応じた過半数の同意で足りる管理行為(252条)なのか、最高裁判所による判決はまだありません。また、委託者指図型投資信託以外の投資信託受益権についても判決がありません。これらに関しては、今後の議論や判決に委ねられることになりますが、少なくとも上記判例(最判平成26.2.25民集68巻2号173頁)からは、監督的機能を有していない可分給付のみを目的とする投資信託では、相続と同時に当然分割される場合もある、と解することもできるでしょう。

  残念ながら実際、遺産分割協議前に勝手な行動をする相続人がいる場合は少なくないようです。今回ご紹介しました内容が皆様にも当てはまるとは限りませんが、少しでもご参考になれば幸いです。


参考文献:民法判例百選Ⅲ 水野紀子・大村敦志編


担当 竹内 美佳 平成28年7月9日

 前回の【遺産分割協議☆協議前の財産は?】において、現金預金、株式、個人向け国債、投資信託の相続についてふれましたが、今回は相続開始から遺産分割までの間に生じた金銭債権について、投資信託の比較事例を交えてご説明していきたいと思います。

概要

①被相続人Aは、証券会社から複数の委託者指図型投資信託を購入しその受益権を有して平成8年10月に亡くなる。受益権は遺産分割されず子供3人の共同相続

*信託銀行が自らの裁量で運用を行うのではなく、委託者である投資信託会社が受託者である信託銀行に運用指図を行う

②平成16年までに収益分配金の発生、満期償還があり被相続人の証券会社口座に預り金として保管されていた。

③1人が証券会社に対し、金銭債権となった以上は当然に相続分に応じて分割される可分債権(民法427条)であるとして、預り金のうち法定相続分にあたる1/3の支払を求めた。

判旨

 上告棄却。理由として

①委託者指図型投資信託の受益権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割される ことはない。(最判平成26.2.25 民集68巻2号173頁)

元本償還金または収益分配金の交付を受ける権利は受益権の内容を構成するものである。

③共同相続された受益権につき、相続開始後に信託財産の償還金又は収益分配金が発生し、それが預り金として受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合にも、金銭債権である預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはない


概要

①被相続人Aの遺産には複数の不動産があり、遺産分割が確定する間の賃料は口座を開設して賃借人にはこれに入金してもらった。

相続開始から遺産分割確定までに生じた賃料について紛争が発生する。

各々の主張

・被上告人・・・相続開始にさかのぼって各不動産を取得した者にそれぞれ帰属する。⇒取得した不動産賃料は相続開始と同時に全て自分のもの。

・上告人・・・法定相続分に応じて帰属する。

判旨

 破棄差戻し(本事例においてわかりやすく言うと上告人の勝訴)。理由として

①遺産は相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有となる。

②その間に生じた賃料債権は、遺産とは別の財産であり、各相続人が相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する。

③遺産分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生ずる(遡及効)が、分割単独債権としての取得が確定的であり、後にされた遺産分割の影響は受けない

まとめ

 上記二つはどちらも、相続開始から遺産分割までの間に生じた金銭債権について争われた裁判です。結論として一方が「遺産の内容を構成するもの」、もう一方は「遺産とは別の財産」と全く異なります。結論としては同じ金銭債権であっても、可分債権でない受益権から生じた預り金債権か、元から可分債権である賃料債権かの違いにあります。可分債権は前回もお伝えした通り、遺産分割の対象とはならず相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されますこれを遺産分割の遡及効によって覆すのは、法的安定性を害する可能性があるので認められないと考えられています。

*ただし、2016年3月23日において預金を他の財産と合わせて遺産分割の対象にできるかどうかが争われた審判の許可抗告審で、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は23日、審理を大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)に回付しました。つまり、実務で当事者の合意があれば分割の対象とするケースが主流となっていることをふまえ、上記のように対象外としてきた判例が見直される可能性があります。

 

今回の事例から、遺産分割前の財産についての捉え方についてお分かりいただけたでしょうか。遺産分割前の財産はこの他にも、預貯金の利息や労働力・資金の提供が想定される個人商店の営業利益など様々なものがあります。このような財産にも上記判例の考えを当てはめるのか、それともその貢献度を加味したまた別の解釈をするのかは今後法律家の検討に委ねたいと思います。


参考文献 民法判例百選Ⅲ 水野紀子・大村敦志編


担当 竹内 美佳 平成28年8月6日

     

 前回は相続について『投資信託』の事例を、『相続開始から遺産分割までの間に生じた金銭債権』に的を絞りご説明しました。今回は少し相続の基本に戻り、『負の遺産』である借金はどうなるのかについてご説明していきたいと思います。

□相続人はA子とB男の子供2人。資産が3000万円、負債は1000万円とします(以下の2つの事例も同様)。

 遺言になんと書かれていようとも、相続人が了承していても、債権者は負債が法定相続分で分割されたとしてA子にもB男にも各々500万円請求でき、B男は遺言内容を主張、支払いを拒むことはできません。なぜか?借金=債務は債権者の権利です。たとえ遺言が上のような内容でも、債権者 の意向が債務者の遺言で無視されてはたまらないからです。

ただし、A子B男ともに遺言内容に異議なしならば、2人の間ではA子が負債1000万円を負い、B男が500万を請求され支払った場合にはA子に求償できます。*1

*1理論上は上記のとおりですが、実際はAが全債務を引き受け、Bは債務免除を受ける契約を改めてするのが一般的です。       

 左のような遺言に借金について記載がない場合はどうなるのでしょうか。

最高裁は、相続人の1人に遺産を全て相続させる遺言により、相続分の全部がその相続人に指定された場合、相続債務も全て相続させるという趣旨と解釈*2するべきであると判示しています(最判平成21年3月24日)。よって、①と同様の取り扱いとなります。        

 B男が遺留分減殺請求した場合はどうでしょうか。

B男が遺留分請求できる金額は、遺留分割合が1/2なので、法定相続分として本来もらえるはずの1/2までです。ところで、ここで計算の基準となる金額はいくらになるのでしょうか?債務は法定相続分で分割されるのだから、

【A子が受け取った資産3000万円-負債500万円=2500万円】・・・

こちらも上記最高裁において判断されており、A子が全債務を相続したとして考えます。つまり、【3000万円-1000万円=2000万円】が基準です。よって、B男が請求できる金額は【(2000万円×1/2)×1/2=500万円】までとなります。

遺留分減殺請求の金額計算においてはA子が全債務を相続したと考えますが、この場合においてもB男は債権者からの支払い請求を拒否できません。もちろんA子に対し求償権はあります。

相続の種類

 今回は、相続人が「そもそも借金なんかヤダ!」と言わない場合のみを取り上げました。借金のほうが財産よりも多い場合には、相続を知った時から3ヶ月以内であれば、相続放棄や相続で得た財産を限度として債務の相続をする限定相続をすることができます。これに対し、制限なく承継するのが単純相続です。相続を知った時から3ヶ月以内に相続放棄も限定相続もしなかった、相続財産を処分した、財産を隠す・私的消費・悪意の財産目録無記載、このような場合は、単純相続したことになります。

ここで注意していただきたいのが、事例②のように、相続人が借金の存在も知らなければ遺言に記載もされていない場合です。相続人としては、プラスの財産だけしかないと信じているので単純相続するのが普通でしょう。その後に大きな借金が発覚!!とだけはならないようにお気をつけください。わざと3ヶ月経過後に相続人へ連絡を取る人もいなくわばいようです・・・。


まとめ

 債務は遺言内容にかかわらず法定相続分で当然に分割されることはおわかりいただけたでしょうか。誤解していただきたくない点は、この分割が債権者への対抗問題にすぎないことです。言い換えるならば、相続人の間での債務分割は遺言や遺言の趣旨*2によって決められることになります。例えば、ローン完済評価2000万円のマンションをA子に、ローン残高1000万円評価3000万円のマンションをB男へ相続させる。との遺言の場合、負債1000万円は500万円ずつ当然に分割されないと解するのが妥当でしょう。ローン残高を考慮したうえで評価の高い方をB男に相続させるとの趣旨が読み取れるからです。

  *2 事例②でも出てきましたが、遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究しその趣旨を確定すべきものである。と最高裁の指針とされています(最高裁昭和58年3月18日判決)。

  自らの死後に裁判となってしまえば、その趣旨を決めるのは裁判官です。いくら天国からそうじゃない~!!と叫んでも聞こえることはないでしょう。本意ではない趣旨に解されないよう、遺言とともに自分の気持ちをお手紙に記しておくなどの準備が大事になるでしょう。


担当 竹内 美佳 平成28年9月4日